最近、家庭菜園を眺めていて特に面白いなと思っているのがこちらです。
この写真はキュウリの株を拡大したものなのですが、ゴーヤなどのウリ科の野菜でも細いつるのようなものをよく見かけます。私自身、つい最近までこれを「つる」と呼んでいたのですが…正しくは「巻きひげ」という名前なのだそうです。
四方八方に伸びている印象のある巻きひげですが、一体どのような役割があるのでしょうか?
巻きひげとは?
巻きひげはウリ科などのつる性植物に多く見られる部位で、周辺の支柱に巻き付けることで自らを支える役割を持ちます。家庭菜園などでつる性植物を植える場合は、巻きひげのための支柱やネットを用意することで、より上へ、かつより広く育てることができます。
栽培する側にとっても、支柱やネットを設置することで以下の恩恵を受けることができます。
①大きく育ち日差しもたくさん浴びられるので、収穫量が増える
②実のついている場所がわかりやすくなるため、収穫時の作業効率が上がる
③通気性が良くなるため、病気にかかりにくい
「つる」との違いは?
巻きひげと混同しやすいのが、私も勘違いしていた蔓(つる)です。ここで、巻きひげとつるの違いについても触れておきたいと思います。両者の違いを一言で表すなら「茎自身なのか、茎とは別に形成された部位なのか」ということになります。
◎巻きひげ
自立できない茎を支えるため、茎から伸びる部位のこと。品種によって、葉が元となる場合と、茎が元となる場合があります。
なお、キュウリの巻きひげは葉が元になっています。キュウリの巻きひげの正体は葉だった!…と言われても、なかなか信じられないのですが。。。笑
◎蔓(つる)
自立できない茎を支えるため、茎自身が支柱などに巻き付いたもの。品種によって、右巻きと左巻きがあります。
▲朝顔のつる(参考)
巻きひげから垣間見えるキュウリの知恵
触手のごとくターゲットを探し、投げ輪のごとくターゲットに巻き付く巻きひげですが…観察を続けているとあることに気付きました。
それがこちらの写真。支柱に巻き付くだけではなく、その根元がバネのようにグルグル捻れていることがわかります。
さらにさらに「バネ」の部分をよく見ると、途中で旋回方向が逆になっています。大半の巻きひげに共通して発生しているようですが、どのようなメカニズムでこの「バネ」は形成されているのでしょうか?
そのメカニズムを順番に説明すると以下のようになります。
①巻き付くターゲットを見つけると、巻きひげの先端がすぐに絡みつく
②絡みついた後、巻きひげの片側のみが木化(=木のように硬くなること)を始める
③片側のみが木化することにより巻きひげ全体に歪みが生じ、捻れが生まれる
④捻れが進行した結果、巻きひげの根元がバネのように旋回する
なお、③の捻れが生じ始める時点で、巻きひげの先端と根元は固定されています。そのため、捻れが生じると真ん中で必ず旋回方向が逆になります(これを反旋点と呼びます)。
巻きひげの捻れによって生まれた「バネ」ですが、ただ闇雲に形成されている訳ではありません。巻き付いた支柱と株の間をバネで繋ぐことにより、風などによる衝撃を吸収することができます。ただ巻き付くだけかと思っていましたが、巻きひげにはキュウリなりの知恵が詰まっているんですね。
色々な巻きひげ
最後に、我が家の家庭菜園で撮影した色々な巻きひげをご紹介したいと思います。被写体は全て同じキュウリの株なのですが、こうして並べると1本1本個性があって面白いですね。
きめ細かな螺旋を描いていたり…
支柱が見つからずにムシャクシャしていたり…
どの支柱に巻き付こうか狙いを定めていたりします。
お近くにつる植物があるようでしたら、是非巻きひげを観察してみてはいかがでしょうか。