少し前のことになりますが、我が家でもマリモを飾っていた時期があります。広い場所を必要とせず、かつ適度な光さえあれば育つため、インテリアとしてもピッタリです(※我が家ではその後枯らしてしまったのですが…)。
そんなマリモですが、その正体については今ひとつ理解できていません。そもそも他の藻類とは異なり、なぜ丸くなる性質があるのでしょうか?
マリモの正体について
マリモの正体は、アオミソウ科マリモ属に属する淡水性の緑藻(りょくそう=緑色をした藻類)の一種です。マリモといえば緑色の丸い球体をイメージしがちですが、その丸い形を形成する細い繊維(糸状体)1本1本がマリモの本体です。糸状体は意外と固く、球状体のマリモはチクチクとした感触があります。
なお全てのマリモが丸く集まるわけではなく、その多くは糸状体の姿で分布しています。水中を浮遊している個体もいれば、(他の藻類と同様に)岩石などに付着している個体もいます。
マリモはなぜ丸くなる?
マリモは丸くなるものばかりではありませんが、私たちがイメージするような丸く集まった集合体も少なからず存在します。そもそも、マリモはなぜ丸くなるのでしょうか?
先程触れたとおり、マリモの正体は繊維状の糸状体であり、本来は丸くなる性質を持ちません。ところが、いくつかの条件が重なることにより丸い形になるのだそうです。例えば、マリモで有名な北海道・阿寒湖の場合は「遠浅の湖」と「強い風」の2つが深く関係しています。まず、阿寒湖は遠浅の地形であり「浅瀬」の呼ばれる範囲が広い点が特徴です。浅瀬は太陽の光が届きやすいため、マリモをはじめとした藻類にとってはうってつけの環境です。加えて、夏場には湖の南側→北側に向かって強い風がよく吹きます。浅瀬ではこの風を受けて波が発生し、独特の水流を生み出します。そして、この水流でマリモが回転することにより、丸い形状になるのだそうです。自然に丸くなっているのかと思いきや、実はさまざまな条件が奇跡的に重なり合っていたんですね。
実は生存競争にも強い!?
北海道・阿寒湖の場合、マリモは限られた区域のみに分布しています。そのため天然記念物として扱われ、当該区域への立ち入り自体が禁止されています。そのような経緯から「マリモはデリケートな植物なのでは?」と思ってしまいがちですが、実は意外にも生存競争に強いのだそうです。
ここでは球状体のマリモを例に挙げますが、この「丸い形状」こそが激しい生存競争を勝ち抜くための秘訣だと言われています。一般的な藻類は地中に根を張って育ちますが、阿寒湖のような浅瀬の場合、強い波が立つとその衝撃で根が抜けてしまうことがあります。ところがマリモは根を持たないため、強い波が立っても回転したり流されたりすることでやり過ごすことができます。なお衝撃によりマリモが砕けてしまうこともありますが、砕けて小さくなることで波の力を受けにくくなるため、むしろ波をやり過ごしやすくなります。そのため、阿寒湖にはさまざまな大きさのマリモが分布しています(※大きいものでは直径30cmほどになるのだそうです)。
マリモはどうやって増えるの?
マリモは花を咲かせない植物(藻)ですが、胞子によってその個体数を増やしていきます。そして、光合成によって糸状体を伸ばすことで成長します(※丸いマリモについては、集まった糸状体がそれぞれ伸びることで成長します)。
先程触れたとおり、丸いマリモについては波などの衝撃で砕けることによってもその数を増やしていきます。
阿寒湖以外にも生息しているの?
私にとってマリモといえば北海道・阿寒湖のイメージがとても強いのですが、阿寒湖以外の湖にも分布しているのでしょうか?
実は、糸状体のマリモであれば阿寒湖以外の湖にも分布しています。例を挙げると小川原湖(青森県)や富士五湖(山梨県)、琵琶湖(滋賀県)などでも見かけることができます。なお、私たちがイメージするような「丸くて大きなマリモ」は阿寒湖特有のものです。
【余談】天然マリモと養殖マリモの違いは?
特別天然記念物で、かつ限られた湖にのみ分布するマリモですが…土産品としてよく販売されていますよね。天然記念物をそんな手軽に売ってしまうなんて!と思ってしまいますが、販売されているものの大半は「養殖マリモ」と呼ばれるものです。
ここで、天然マリモと養殖マリモの違いについて簡単にまとめてみました。我が家に飾っていたものも養殖マリモで、北海道旅行の際に数百円程度で購入したものです。
◎天然マリモ
・自然環境下で丸くなったもの
・中心から放射状に藻が伸びているため、比較的成長が早い
・海外産のものであれば、土産物店なとで販売されていることがある(西洋マリモ、ヨーロッパマリモなどと呼ばれる)
◎養殖マリモ
・糸状体のマリモを人の手で丸くしたもの(※国内で流通する養殖マリモは、釧路湿原国立公園内のシラルトロ湖で採取されたものが用いられている)
・藻が不規則に絡み合っているため、比較的成長が遅い
・土産物店などで比較的安価に販売されている
こうしてまとめてみると、ますますマリモに興味が湧いてきました。また北海道を訪れる機会があれば、改めて養殖マリモを育ててみたいなと思っています。