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前回の昆布に引き続き、今回も海藻に関する話題です。今回取り上げるのは天草(てんぐさ)と呼ばれる海藻で、寒天の原料としてもよく知られています。
そんな天草から作られる寒天は、水に溶かして冷やすとまるでゼリーのように固まりますよね(※食感は異なりますが)。海藻として海に生えている時は固まることもありませんが、なぜ寒天に加工することで固まるようになるのでしょうか?
天草の概要
科・属名:テングサ科(※属名は品種により異なる)
種別:海藻(紅藻類)
花色:─(胞子により繁殖)
花期:─(胞子により繁殖)
収穫期:5〜6月
原産:北半球・南半球の暖かい海域
別名:セッカサイ(石花菜)など
花言葉:─
◎特徴:
テングサ科に属する寒天・心太(ところてん)の原料となる紅藻類の総称で、暖かい海域を中心に約80種類が分布しています。植物学上は「テングサ」と呼ばれる海藻は存在せず、収穫する海域などによって品種が異なります。
紅藻類に属している通り元々は赤紫色をしており、収穫後に洗浄と天日干しを繰り返すことで脱色を行います。こうして色の抜けたものは、寒天(棒寒天(角寒天)、粉寒天、糸寒天(細寒天)への加工も含む)として店頭に並んでいます。
寒天が固まるのはなぜ?
寒天(天草)はアガロース、アガロペクチンと呼ばれる多糖類を多く含んでいます。アガロース・アガロペクチンは元々網目状の構造をしていますが、熱を加えることでこの網目が解け、糸状となってお湯に溶け出します。このお湯を冷やすとアガロース・アガロペクチンは元の網目状に戻ろうとするのですが、この際に水を囲い込んだ状態で結合してしまいます。この状態こそが、皆さまもよく知っている寒天というわけです。
したがって、寒天を固めるためには「加熱してお湯に溶かす作業」と「そのお湯を冷やして固める作業」の2つが必要になります。人の手を介す必要があるため、天草として海に生えている時は決して固まることはありません。
生産量1位は何と長野県!?
「海藻」という名の通り、寒天の原料となる天草は海で収穫されます。ところが、寒天の都道府県別生産量を参照すると何と長野県が全体の約9割を占めていることがわかります。長野県といえば海に面していない県(内陸県、海なし県)の1つですが、なぜ寒天の一大名産地となっているのでしょうか?
これには、内陸県ならではの気候が大きく関係しています。寒天の産地として特に有名なのが長野県諏訪地方で、諏訪地方の天候には以下のような特徴があります。
・内陸のため昼夜の温度差が大きい
・降雪量が少なく、冬季の日中は晴れやすい
一般的に、寒天(棒寒天・角寒天)は天草の煮汁を固めたものを天日干しし、水分を抜くことによって作ります。昼夜の温度差が大きい諏訪地方では、冬季に寒天を天日干しすることで夜間は凍り、日中は溶けてを繰り返します。かつ日中は晴れやすいため、凍って溶けての繰り返しによって効率良く水分を抜くことができます。内陸県である長野県諏訪地方が寒天の名産地となったのは、その気候と寒天作りの愛称の良さが理由だったんですね。
夜間に寒天を凍らせる必要があるため寒天作りのシーズンは冬季ですが、近年は地球温暖化等の影響によりそのシーズンも短くなりつつあるようです。