植物の実といえば赤・橙・黄・緑・紫・茶・黒・白など、さまざまな色合いがありますよね。青に関してはややバリエーションが少ないような気もしますが、ノブドウやジャノヒゲ(リュウノヒゲ)などは結構鮮やかな青色をしています。
▲ノブドウの実
▲ジャノヒゲ(リュウノヒゲ)の実
それでは「灰色の実」と言われたら、どんな植物を連想されますでしょうか。先日、灰色がかった実をつけるネズミモチを見かけたため、今回はこちらの樹木についてご紹介したいと思います。
ネズミモチの概要
科・属名:モクセイ科イボタノキ属
種別:常緑小高木
花色:白
花期:5〜6月
原産:日本
別名:タマツバキなど
花言葉:名より実など
◎特徴:
日本原産の常緑小高木で、関東〜沖縄の主に太平洋側に分布しています。それほど樹高は高くならず、かつ強剪定にも強いため、街路樹や庭木としても重宝されています。他の植物に比べて花や実が目立たない点は否めませんが、近年では斑入りの品種も流通しており、花・緑だけではなく葉も楽しむことができます。
また、中国原産のトウネズミモチに見た目がよく似ており、しばしば混同されることがあります。両者の違いとしては、実の形(ネズミモチは楕円形、トウネズミモチは円形)などが挙げられます。
名前の由来は?
ネズミモチといえば頭に「ネズミ」が付くインパクトのある名前が特徴ですが、本当に動物のネズミが関係しているのでしょうか?
調べてみたところ、実の形状がネズミの糞に、かつ光沢のある葉がモチノキにそれぞれ似ていることからその名が付けられたのだそうです。私が冒頭で取り上げた実の色(灰色がかった褐色)も関係しているかと思いきや、それらしき語源は特に見当たりませんでした。またモチノキはモチノキ科モチノキ属の樹木であり、ネズミモチ(モクセイ科イボタノキ属)とは全くの別種です。
▲モチノキの仲間(クロガネモチ)(参考)
生薬としての利用
「ネズミの糞」と言われると使う気が失せてしまいそうですが…ネズミモチの実は和女貞子(わにょていし)と呼ばれる生薬として重宝されています。和女貞子は熟した実を乾燥させることによって作られ、動脈硬化予防・滋養強壮・解熱などの効能があります。
なお、トウネズミモチの実を乾燥させたものは同様に女貞子(じょていし)と呼ばれます。ネズミモチは日本原産、トウネズミモチは中国原産であるため、「和」を付けることで日本原産の樹木かどうかを区別しているようです。