昨年と同様、今年もゴールデンウィーク前半は田植えのため実家に帰省していました。昨年よりも天候に恵まれむしろ暑いくらいでしたが、予定通り作業を終えることができました。
そんな田植え作業中、畦道でノビルを何株か見かけました。既に花は咲き終えているように見えるのですが、その後にできるはずの実(種)の様子が少しおかしいことに気付きました。気になって調べてみたので、今回はその事を記事にしてみたいと思います。
ノビルの概要
科・属名:ヒガンバナ科ネギ属
種別:多年草
花色:白
花期:5〜6月
原産:日本、朝鮮半島、中国
別名:ヒル(蒜)、タマビル(玉蒜)など
花言葉:タフなあなたのことが好き、胸の高まり、よろこびなど
◎特徴:
日本・朝鮮半島・中国を原産とする多年草で、日本では北海道〜沖縄まで広く分布しています。野に生える蒜(ヒル=ネギ属の野菜の古称)という意味合いから、その名が付けられました。
見た目や臭いがネギ・ニラなどに似ており、古くから食用の野草として親しまれています。主に葉と球根を食用とし、1年中採取することができます(※生育場所にもよりますが、一般的には春が旬だとされています)。
ノビルの実は落ちる前に発芽するのか?
ノビルの概要をご紹介したところで、そろそろ本題に入りたいと思います。冒頭で私が「少し様子がおかしい」と感じたノビルがこちらです。花茎の先端に付いているため、おそらく花が咲き終わった後にできた実(種)だと思われるのですが…一般的な種とは異なり、既に芽のようなものが出ていることがわかります。
試しに実らしきものを1つ採取してみました。こうして見ると、球根から葉が伸びているような見た目をしていることがわかります。まるで親株をそのまま小さくしたような感じですね。
今回見つけた「実」の正体は?
先程取り上げた「実らしきもの」の正体について調べてみたところ、実や種ではなく、本来花になるはずだった器官が変化したむかご(珠芽)だということがわかりました。むかごといえば自然薯やオニユリのイメージが強かったのですが、ノビルにもむかごができるんですね。なおノビルのむかごもそのまま地面に落ちることで新しい個体として成長することができるため、種や球根(分球)に並ぶ「第3の繁殖方法」ということになります。
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わざわざ花が咲く場所にむかごを作るのはなぜ?
ただここで1つ気になったのですが…自然薯やオニユリは花(種)とは異なる場所にむかごを形成するのに対し、ノビルは本来花が咲くべき場所の細胞をわざわざ変化させてむかごを形成しています。どうせなら種とむかごを別々に形成すれば良いのでは?とも思うのですが、なぜこのような性質になったのでしょうか?
▲ノビルの種(参考)
こちらについても調べてみたところ、どうやら「個体を増やすのであれば、種よりもムカゴの方が手っ取り早いから」というのが答えになりそうです。ノビルは元々人の手が入るような場所(畑、道端、河川敷など)に多く分布しており、今回私が見かけたノビルは田んぼの畦道で見かけたものです。この場所はよく草刈りが行われるため、開花→受粉→結実を待っていると、その前に刈られてしまうことも珍しくありません。そのため人の手が入りやすい場所で生育する個体の多くは、花を咲かせずにむかごだけを形成するようになったと考えられています(※中には下記写真左下のように、1本の花茎で花とむかごが混在することもあります)。
そう言えばノビルの花期は5〜6月頃ですが、冒頭に掲載した写真は5月1日に撮影したものでした。5月上旬の時点で既にむかごが出来上がっていることから考えても…やはり個体を増やすことだけが目的なのであれば、種よりもむかごの方が手っ取り早いのかもしれませんね。