先日、家族で立ち寄った公園にて栃の実(トチノキの実)が落ちているのを見つけました。ドングリ拾いの類が好きな長男・次男はすぐに走り出し、周辺に落ちていた実を全て集めてきました。「まだ木から落ちたばかりの実」というのもありますが、表面がつやつやしていてとても綺麗ですよね。
さて、今回拾った栃の実は「栃餅」「栃の実せんべい」などの原料としても知られており、食用にできる点は栗とも共通しています。栗はいわゆる「ドングリ」の一種なのですが、トチノキも同じようにドングリの仲間なのでしょうか?
トチノキ(栃)の概要
科・属名:ムクロジ科トチノキ属
種別:落葉高木
花色:白
花期:5〜6月
原産:日本
別名:トチなど
花言葉:贅沢、豪奢、健康など
◎特徴:
日本原産の落葉高木で、北海道〜九州地方にかけて分布しています(特に北海道〜東北地方に多い)。トチノキのトは「十」、チは「千」の意味を持ち、1本の木に多くの実を付ける性質をあらわしています。実には苦味や渋味が多く含まれるため高度なアク抜き技術が必要になりますが、アク抜きした実は広く食用にされています。
同じく「トチノキ」の名が付く樹木としては以下が挙げられますが、それぞれ原産地やルーツが異なります。
・トチノキ(白花):日本原産
・セイヨウトチノキ(白花):ヨーロッパ原産
・アカバナトチノキ(赤花):北アメリカ原産
・ベニバナトチノキ(桃花):セイヨウトチノキとアカバナトチノキの交雑により誕生
◎トチノキの概要は下記記事からの引用です
【都道府県の花#09】栃木県の木・花について - アタマの中は花畑
トチノキはドングリの仲間なの?
以前投稿した記事からの引用になりますが、ブナ科の果実を総称してドングリと呼びます。そのため、ブナ科に属する栗はドングリの一種と言えますが(※)、ムクロジ科に属するトチノキはドングリではないことになります。したがって、冒頭で息子達が楽しんでいたのは「ドングリ拾い」ではなく、「栃の実拾い」ということになりますね。
◎関連記事はこちら
【団栗】栗とは全く関係ない!?ドングリの名前の由来とは? - アタマの中は花畑
拾った栃の実は自宅で調理可能なの?
(ドングリではないにせよ)見た目が栗に似ており、栃餅やせんべいの原料としても知られる栃の実ですが…仮に拾って持ち帰った場合、自宅で調理して食べることは可能なのでしょうか?
結論から言ってしまえば、自宅で栃の実を調理し、食用とすることは可能です。但し、概要欄でも触れた通り苦味や渋味が強いため、食べるためには気の遠くなるようなアク抜き作業が必要になります。
アク抜き作業のざっくりした工程は以下のとおりです。アク抜き作業に多大な時間と労力を要していることを知れば、栃餅や栃の実せんべいがより有り難く感じるようになる…かもしれません。
1. 殺虫のため数日間水に浸す
2. カラカラになるまで天日干しする
3. 熱湯に浸して一晩置く
4. 柔らかくなった表皮を剥く
5. 流水に1〜2週間ほどさらす
6. 熱湯と木灰を加えて混ぜ、1日以上保温する
7. 木灰を洗い流し、薄皮を剥く
8. ようやく完了
それでも栃の実が食用にされるのはなぜ?
冒頭で集めた栃の実を仮に持ち帰っていたとしても、私ならまず加工・調理はしなかったと思います。多大な時間と労力を要するにも関わらず、わざわざ栃の実を食用にしているのは一体なぜなのでしょうか?
栃の実を食べるようになったのは縄文時代からと言われていますが、当時は山間部を中心に穀物が入手しにくい状況でした。栃の実であれば山間部でも入手しやすかったため、貴重な食糧として扱われてきました。さらに栃の実自体の栄養価も高いため、アク抜き技術を伴うものだったしてと、食用として加工する価値があったと考えられます。現在では食糧というより伝統食としての意味合いが強まりつつありますが、栃の実を食べる文化はしっかりと受け継がれています。