突然ですが、皆さまはこちらの植物の名前をご存知でしょうか。こちらはアイスプラントとも呼ばれる野菜で、名前だけなら今の季節にぴったりです。私自身も以前種を購入し、育ててみようとしたことがあるのですが…結局発芽することなく終わってしまいました。。。
そんなアイスプラントですが、そのまま食べてもほんのり塩味がすることでも知られています。他の植物にはなかなか見られない特徴ですが、アイスプラント自身で塩分を作り出しているのでしょうか?
アイスプラントの概要
科・属名:ハマミズナ科メセンブリアンテマ属
種別:一年草(多年草として扱うケースもあり)
花色:白
花期:7〜8月
収穫期:通年
原産:南アフリカ
別名:ソルトリーフ、バラフ、ブッチーナなど
花言葉:感謝、清廉潔白など
◎特徴:
ハマミズナ科に属する植物の総称で、南アフリカ(ナミブ砂漠)を原産としています。葉や茎の表面にキラキラとした細胞(水泡)を持ち、これが凍っているように見えることからその名が付けられました。
基本的には一年草として扱われますが、管理方法次第では複数年育てられるため、多年草として扱われるケースもあります。なお、一度花が咲くと種を作り株が枯れてしまうため、長く育てたい場合は花芽を摘み取りながら管理する必要があります。
塩味がするのはなぜ?
アイスプラントは、葉や茎の表面にあるブラッダー細胞に塩分を溜め込んでいるため、そのまま食べてもほんのり塩味を感じます。ブラッダー細胞とは、植物の表皮細胞が分化することによって形成された毛状突起(トライコーム)の一種であり、概要欄で触れた「キラキラとした細胞(水泡)」がまさにこの部分です。
なお塩分を溜め込む性質こそありませんが、トライコーム自体はスイカ・トマト・カボチャの新芽などでも見ることができます(※産毛のように見える部分がトライコームです)。
◎トライコームの概要についてはこちら
【西瓜】スイカの表面に細かな産毛が生えているのはなぜ? - アタマの中は花畑
塩分はどこからやって来るの?
アイスプラントに塩分を溜め込む性質があることは分かりましたが、その塩分は一体どこからやって来るのでしょうか?
調べてみたところ、アイスプラント自身で塩分を生成している訳ではなく、土壌の塩分を吸収し溜め込んでいることがわかりました。アイスプラントの原産地は南アフリカのナミブ砂漠で、雨量が非常に少ないうえに、土壌の塩分濃度が高い地域です。植物にとっても非常に過酷な環境となりますが、アイスプラントに関してはこの環境を生き抜く能力を身に付けています。具体的には、土壌から吸収した塩分濃度の高い水分からナトリウムを分離し、分離したナトリウムをブラッダー細胞に溜め込んでいます(※このメカニズムにより、塩分濃度を下げた水を、アイスプラント自身の成長に利用することができます)。この溜め込んだ塩分こそが「アイスプラントを食べた時の塩味」というわけです。
ちなみに、自宅でアイスプラントを栽培する際は意図的に塩水を与える必要があります。収穫前に塩水を与えつつ管理することにより、同様の塩味を持たせることができます。
上記の性質から、土壌の塩害対策・砂漠化対策としてアイスプラントが植えられるケースもあります。日本へ最初にアイスプラントがやって来たのは1985年のことですが、この際も有明海沿岸の塩害対策に役立てるため、佐賀大学農学部が持ち込んだものだと言われています。