今回は、日本を代表する昔話「桃太郎」に関する話題です。桃太郎の冒頭と言えば「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。」でお馴染みですが…大人になった今でも聞き慣れないフレーズが1つ混ざっています。
そのフレーズと言うのが、おじいさんが山で行う「しばかり」です。何となくしばかり=芝刈りのようなイメージを持ってしまうのですが、おじいさんは本当に芝を刈りに行っていたのでしょうか?
おじいさんの「しばかり」の正体は?
タイトルおよび冒頭では敢えて平仮名で記載していましたが、しばかりは漢字で「柴刈り」と記載します。柴とは小さな枝や雑木(=落ちている枯れた小枝)の総称であり、特定の植物を表す言葉ではありません。身近なところで言えば、二宮金次郎の像が背中に背負っている小枝も「柴」だと考えられます。
柴は、かまどなどの燃料として用いられるもので、(小さくて乾燥しているため)薪割りなどの事前作業を行わずにそのまま使用することができます。つまり、桃太郎に登場するおじいさんは燃料にするための小枝を拾いに山へ行っていた、ということになります。電気やガスが普及した今では「柴刈り」という言葉を聞く機会自体が無くなってしまったため、冒頭の私のように「しばかり=芝刈り」と勘違いしている方がいらっしゃるかもしれません。
桃太郎が桃から生まれたのはなぜ?
洗濯に行ったおばあさんが川を流れていた桃を拾って持ち帰り、柴刈りから帰ってきたおじいさんと一緒に食べようとした結果、中から男の子が生まれます。このことから桃太郎と名付けられるわけなのですが…数ある果物の中から、なぜ桃が題材に選ばれたのでしょうか?
早速調べてみたところ、桃が選ばれた理由についは諸説あるようです。ここでは代表的な説について、2つほど取り上げてみたいと思います。
①生命力や不老の象徴とされているため
・桃は古来より生命力や不老(長寿)の象徴とされてきました。 桃から生まれた桃太郎は、これらの特別な力を持った英雄として描写されているようです。
②魔除け・厄除けの力を持つため
・桃は邪気を払う果物として扱われ、魔除け・厄除けの力を持つとされてきました。この言い伝えが鬼退治を連想させ、桃太郎の物語に結びついたと考えられます。
※ちなみに、桃太郎と言えば「桃の中から出てきた」というお話が一般的ですが…「栄養満点の桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返り、その後夫婦の間に男の子が生まれた」とする説もあります。以前「トリビアの泉」の中でも紹介されたことがあり、今でも当時の内容をよく覚えています。
桃太郎がきびだんごを腰に付けたのはなぜ?
その後、立派に成長した桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治へ出掛けるわけなのですが、その際におばあさんがきびだんごを持たせてくれます。「桃太郎と言えばきびだんご」と言っても過言ではないほどの関係性ですが…なぜ数ある食べ物の中からきびだんごが題材に選ばれたのでしょうか?
こちらも諸説あるようですので、代表的な説を2つほどご紹介したいと思います。
①吉備国の特産品であったため
・現在の岡山県周辺にあたる吉備国には、桃太郎伝説に関連する言い伝えが多く残されています。吉備国ではきびが多く生産されていたため、桃太郎伝説が広まる過程で、土地の名産品であるきびを使った団子が組み込まれたと考えられます。
②旅の携行食として適していたため
・米が普及する前、きびは日本の主要穀物の1つでした。きびは栄養価が高く、保存が効くため、鬼ヶ島への旅路の携行食としても適していたようです。
▲きび(黍)(参考)