今回は、こちらのニオイバンマツリを取り上げてみたいと思います。ニオイバンマツリはちょうど今くらいの時期によく見かける樹木で、コンパクトかつ開花時の見栄えが良いため、私自身もいつか育ててみたいと思っている植物の1つです。
そんなニオイバンマツリは、1本の木で2色の花(紫と白)を咲かせることでも知られています。どうやら開花からの経過時間によって花色が変化しているようなのですが、何故このような性質を持っているのでしょうか?
ニオイバンマツリの概要
科・属名:ナス科ブルンフェルシア属
種別:常緑低木
花色:紫、白
花期:4〜7月
原産:熱帯アメリカ
別名:ブルンフェルシアなど
花言葉:夢の名、浮気な人など
◎特徴:
熱帯アメリカ原産の常緑低木で、日本へは明治時代末期に渡来しました。漢字では匂蕃茉莉と表記し、「外国(蕃)から渡来したジャスミン(茉莉)の香り(匂)がする花」という意味合いを持っています。但し、ジャスミンはモクセイ科ソケイ属に属しているため、ニオイバンマツリとは全く異なる植物です。
ブラジル南部やアルゼンチンなどの熱帯アメリカを原産とするものの、耐寒温度は5℃程度と比較的高いため、日本国内でも温暖な地域であれば地植えも可能です。
▲ジャスミンの花(参考)
1本の木で2色の花を咲かせるのはなぜ?
冒頭でも触れた通り、ニオイバンマツリは1本の木で紫と白の花を同時に楽しむことができます。ただ、特定の枝のみ異なる色の花を咲かせる「枝変わり」とは異なり、両方の色の花が木全体で満遍なく混ざっているように見えます。それでは、どのような理由で2色の花を咲かせているのでしょうか?
◎枝変わりについてはこちら
【枝変わり】特定の枝だけ違う色の花が咲くのはなぜ? - アタマの中は花畑
ニオイバンマツリの場合、開花直後の花色は紫ですが、開花からの時間経過によって徐々に色が薄れ、最終的には白に変わる性質があります。紫色の花弁は主にアントシアニン(※ブルーベリーなどに含まれる紫系統の色素)によるものですが、このアントシアニンが酸化酵素によって徐々に分解されることで、花色が変化しているようです。花の老化・劣化に関連した現象と考えられますが、花色を変える理由についてはまだ明らかにされていないようです。
なお「浮気な人」という花言葉に関しては、ニオンバンマツリの花色が日ごとに変化する様子にちなんでいます。
開花からの時間経過で花色を変える植物達
ニオンバンマツリに関してはアントシアニンが分解されることで花色が紫→白へと変化しますが、これとは逆の性質を持つ植物も存在します。例えばランタナ(シチヘンゲ)、ハコネウツギ、スイフヨウに関しては、開花からの時間経過によってアントシアニンが生成され、花色が白・黄系統→赤系統へと変化します。
この性質に関しては、受粉の効率を高めるためではないか?と言われています。先ほど挙げた植物は昆虫などの力を借りて受粉を行っていますが、白や黄色の花に対して、ピンクや赤の花は昆虫に認識されにくいと言われています(※自然界でピンク〜赤系統の花が少ないのはこのためです)。そのため、開花から時間が経過した「古い花」を敢えて赤っぽくすることによって、開花したばかりの「新しい花」に昆虫をおびき寄せている…という説が有力です。
▲ランタナ
▲ハコネウツギ
▲スイフヨウ
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