今回は、漢字で「勿布」と書く植物についてご紹介したいと思います。漢字だけでは私自身も何の植物なのか分からなかったのですが、「ホップ」と書けばピンと来る方も多いのではないでしょうか。ホップはビールの主原料としても有名で、ビールには欠かせない植物と言っても過言ではありません。

そんなホップですが、実際にはどのような植物で、どの部分がビールの原料になるかはあまり知られていないのが実情です。そこで今回は、私自身もよく知らなかったホップについて、少しだけ調べてみることにしました。
ホップの概要

科・属名:アサ科カラハナソウ属
種別:多年草
花色:黄緑
花期:8〜9月
収穫期:8〜9月
原産:西アジア、ヨーロッパ
別名:セイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)など
花言葉:希望、信じる心、天真爛漫など
◎特徴:
西アジアまたはヨーロッパを原産とする多年草で、日本では北海道の一部に自生しています。日本で野生のホップが最初に発見されたのは明治初期のことで、その後北海道開拓使によって外国産のホップの苗が持ち込まれたことで本格的な栽培が始まりました。冷涼な気候を好み、現在でも北海道〜東北地方を中心に生産されています。
ホップはビールの主原料としても知られ、毱花(まりはな)とも呼ばれる雌花が用いられます。雌雄異株のため、ビール用ホップの生産にあたっては主に雌株が栽培されています。
ビールに用いられるのは雌花のみ?
概要欄でも触れた通り、ビールには毱花と呼ばれる雌花が用いられます。同じ花であれば雄花も使えそうな気がするのですが、何故雌花だけが選ばれているのでしょうか?

ホップの雌花(苞の付け根部分)には、ルプリン腺と呼ばれる黄色い点のように見える器官があります。ルプリン腺からは精油や樹脂成分が分泌されるのですが、この成分こそがビールには欠かせないものとなっています。代表的な成分は以下の通りで、ビールの善し悪しはホップの品質によって大きく左右されます。
◎α酸、β酸
・ビールの苦味成分に関与
◎精油(ホップオイル)
・ビールの香り成分に関与
◎樹脂成分
・ビールの泡持ちや、酸化防止に関与

なお、上記の成分には花粉を誘引する効果や、種子を守る効果もあります。そのため、ルプリン腺はホップの雌花にのみ形成される器官であり、雄花には見られません。したがって、ビールの原料にホップの雌花しか用いられないのは「ビールに関与する成分(ルプリン腺)が雌花にしかないため」ということになります。また受粉が完了するとルプリン腺が少なくなることなどから、ビールの生産にあたっては主に未受粉の雌花が用いられます。
ホップとカナハラソウの違いは?
別名「セイヨウカラハナソウ」とも呼ばれるホップですが、カラハナソウと見た目がよく似ているため、よく混同されることがあります。カラハナソウは日本および中国北部を原産とし、日本では北海道〜中部地方の山間部で多く見かけられることから「日本のホップ」「山のホップ」とも呼ばれます。ただホップに比べてルプリン腺が少なく、香りの面でも劣るため、ビール醸造にはあまり向いていないと言われています(※)。
※カラハナソウを用いたビールの醸造例もあるようですが、風味や品質の観点で商品化はなかなか難しいようです。

▲カラハナソウの花(参考)