先週末に家族キャンプを予定していたのですが、あいにくの雨で中止を余儀なくされました。これ以上寒くなると子供達の体調面も少し心配になってくるため、次のキャンプは翌春まで持ち越しになりそうです。長男・次男もとても楽しみにしていたため、私達にとってはとても残念な雨となってしまいました。

ということで今回は、そんな雨に関する話題を1つ取り上げたいと思います。植物にとっては「恵みの雨」と称されることもある雨ですが、中には雨によって植物が枯れてしまうケースもあります。少し前によく聞いた「酸性雨」もその1つですが、なぜ酸性雨は植物を枯らしてしまうのでしょうか?
酸性雨の定義
酸性雨とは、産業活動によって排出されたれ硫黄酸化物(SOx)窒素酸化物(NOx)が大気中で硫酸・硝酸などに変化し、雨に溶け込んで酸化したもののことを指します(※)。一般的な雨には二酸化炭素が溶け込んでいるため元々弱酸性を示しますが、ここに硫酸・硝酸が加わるためさらにpHが下がります。二酸化炭素が十分に溶け込んだ雨のpHが5.6程度と言われるため、酸性雨に関しては「pH5.6未満であること」が基準になっています。

※ちなみに、同様の理由で酸性になった雪を酸性雪(さんせいゆき)、酸性になった霧を酸性霧(さんせいぎり、さんせいむ)と呼ぶのだそうです。
酸性雨で植物が枯れるのはなぜ?
酸性雨は湖沼・河川の酸性化や建築物・文化財の劣化など、さまざまな環境問題を引き起こす現象です。植物に関しても例外ではなく、ヨーロッパや北米の森林を中心に樹木の立ち枯れが発生しています(1960〜1980年代にかけて、ドイツ・チェコ・ポーランドの国境付近では特に甚大な被害が発生しました。この地域のことを「黒い三角地帯」とも呼びます)。日本に関しては酸性雨以外の要因も関わっているようですが、一部の森林では同様の立ち枯れが見られます。

(※写真はイメージです)
ここまでの内容を踏まえると、酸性雨に溶け込んだ硝酸や硫酸が原因であることはほぼ間違いありませんが、植物に対して一体どのような影響を及ぼしているのでしょうか?
本記事では、土壌への影響・根への影響・葉への影響の3つに分けて整理してみました。土壌・根・葉の3方向から侵食されてしまっては、植物にとっても非常に耐えがたいところですね。
◎土壌への影響
・酸性雨によって土壌のpHが低下すると、植物の生長に必要なカルシウム・マグネシウム・カリウムなどの栄養素が溶けて流出します。これにより、植物が十分な栄養素を吸収できなくなってしまいます。さらに、植物にとっては有害なアルミニウム・マンガンなどが土壌へ溶け出すことによって、植物に悪影響を及ぼします。
◎根への影響
・アルミニウムやマンガンが土壌へ溶け出すことによって、植物の根の生長を阻害します。これによって細い根が少なくなるため、水分や栄養素の吸収力が低下し、植物を弱らせてしまいます。
◎葉への影響
・酸性雨が葉の表面に付着することで、葉のクチクラ層(葉の表面を覆うワックス状の保護膜)を傷付けます。その結果、葉の内部に酸性雨が入り込んで細胞を破壊し、光合成能力を低下させます。その後、葉の表面に斑点や変色が表れ、最終的には枯れ落ちてしまいます。
【余談】最近酸性雨について聞かない気がするのはなぜ?
私がまだ小さかった頃、学校の授業やテレビで度々酸性雨のことが取り上げられていた記憶があります。ところが、最近は以前ほど「酸性雨」という言葉を聞かなくなったような気もします。私がただニュースを見ていないだけかもしれませんが、以前に比べて酸性雨が取り上げられなくなったのはなぜなのでしょうか?

早速調べてみたところ、酸性雨の話を最近あまり聞かなくなったのはどうやら本当のようです。主な要因としては環境対策の継続が挙げられ、特に硫黄酸化物(SOx)の排出量に関しては、ピーク時の1割以下まで抑えられている地域もあるほどです。日本の酸性雨についても少しずつですが改善の傾向が見られ、以前に比べて環境へ与える影響も小さくなってきているようです。したがって、継続的な環境対策によって状況が改善されたことで、徐々に「酸性雨」が取り上げられなくなったものと考えられます。
しかしながら、現在でも酸性雨の定義(pH5.6未満)は満たしており、酸性雨の影響がゼロになった訳ではありません。酸性雨のもう1つの要因である窒素酸化物(NOx)に関しては、自動車の普及も相まって、排出量の大幅な削減には至っていません。また将来的にNOxの排出量が抑えられたとしても、土壌や湖沼に溶け込んだ硫酸・硝酸がすぐに無くなる訳ではありません。酸性雨による被害を減らすには長い年月が掛かるため、継続的な環境対策が必要不可欠ということになります。