3月になり徐々に植物が青々としてきたので、道端の雑草にも視線を向ける機会が増えてきました。そんな時、久々にヤエムグラを見かけたため、今回はヤエムグラについて取り上げたいと思います。

ヤエムグラと言えば、百人一首に登場する「八重むぐら しげれる宿の 寂しきに…」という和歌を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。正直なところ、ヤエムグラ自体あまり知られた雑草ではないような気がしますが…百人一首に登場しているのは本当にこの「ヤエムグラ」なのでしょうか?
ヤエムグラの概要

科・属名:アカネ科ヤエムグラ属
種別:一年草または越年草
花色:白
花期:4〜6月
原産:アジア、ヨーロッパ、北アフリカ
別名:クンショウグサ(勲章草)など
花言葉:抵抗、拮抗、逞しい生命力
◎特徴:
アジア、ヨーロッパ、北アフリカなどの広い範囲を原産とする一年草(または越年草)で、日本では北海道〜沖縄の全土で見かけることができます。茎や葉には逆向きの小さな棘が生えており、これを衣服に引っ掛けて遊んでいたことからクンショウグサ(勲章草)と呼ばれることもあります。
ヤエムグラの花は白であまり目立ちませんが、見た目がよく似たハナヤエムグラはピンク色の花を咲かせます。ハナヤエムグラはヨーロッパ原産の帰化植物で、個体数はそれほど多くないものの北海道〜四国地方で見かけることができます。

▲ハナヤエムグラ(参考)
名前の由来は?
「ヤエムグラ(八重葎)」という名称は、葉の付き方と古い植物の呼び名に由来しています。まず「ヤエ(八重)」については、葉が一箇所から放射状に伸びる様子を表したものです。ヤエムグラには茎の節ごとに細い葉が輪のように並び、そこから放射状に伸びる性質があるため、この様子が由来になったと言われています。

続いて「ムグラ(葎)」に関しては、古くから雑草の総称として用いられてきた言葉です。ヤエムグラの茎や葉には逆向きの小さな棘が生えており、周囲の植物に絡み付きながら生長していきます。この光景を雑草が繁茂する様子に準え、ムグラと名付けられたと考えられています。
そして、これら2つを合わせることがヤエ(八重)+ムグラ(葎)=ヤエムグラと呼ばれるようになりました。
百人一首の「八重むぐら」との関係は?
冒頭で触れた「八重むぐら しげれる宿の 寂しきに 人こそ見えね 秋はきにけり」は平安時代の歌人である恵慶法師(えぎょうほうし)の和歌で、百人一首の47番として登場します。「ヤエムグラ」という読み方は全く同じですが、今回取り上げているヤエムグラとはどのような関係性があるのでしょうか?

まず先程の和歌の意味についてですが、現代語に訳すと「幾重にも雑草が生い茂っている荒れ寂れた家は寂しく、人も誰も訪ねてこないが、秋だけはちゃんと訪れるようだ」といった意味合いを持ちます。したがって、この和歌に登場する八重むぐらは「幾重にも生い茂った雑草」を指しており、ヤエムグラ単体を表している訳ではないという説が有力です。もちろん、この雑草の中にヤエムグラが含まれていた可能性はありますが…直接的な関係性はほぼ無いと考えておいた方が良いかもしれません。