11月にもなると、我が家の周りでも赤や黄色に色付いた葉が見られるようになります。紅葉といえばモミジやイチョウが有名ですが、それ以外の樹木でも葉が鮮やかな色に変わるものは意外と多くあります。
▲ユリノキ(ハンテンボク)
さて、今回はそんな中でウルシ(漆)と呼ばれる植物をご紹介したいと思います。ウルシの葉もまた鮮やかな赤色に変わるのですが、その色に見惚れて触ってしまうと肌がかぶれてしまうことがあります。私もよく触ろうとして両親に怒られたものですが…なぜ肌がかぶれてしまうのでしょうか?
ウルシ(漆)の概要
科・属名:ウルシ科ウルシ属
種別:落葉高木
花色:白
花期:5〜6月
原産:中国、インドなど
別名:カブレノキなど
花言葉:賢明、頭脳明晰など
◎特徴:
中国・インドなどを原産とする落葉高木で、日本へは奈良時代に到来したと言われています(※諸説あります)。樹液を採取する目的で全国的に広く植えられ、現在では野生化した地域もあります。樹高は10〜15mに達し、10月頃になると葉が鮮やかな赤色に変わります。
近縁種にヤマウルシ、ハゼノキ、ヤマハゼなどがあり、いずれも見た目がとてもよく似ています(※葉の形状などが異なるようです)。
ウルシに触れると肌がかぶれるのはなぜ?
冒頭でも触れたとおり、ウルシと言えば触れただけで肌がかぶれるとも言われています。これにはウルシオールと呼ばれる成分が関係しています。ウルシオールとはウルシの葉や樹皮から分泌される樹液の主成分で、漆器などに用いる生漆(きるうし)の原料としても知られています。このウルシオールが肌に触れることで患部が炎症し、腫れ・痒み・痛みなどを引き起こします。なお、この症状は葉や樹皮に触れた直後ではなく、数時間〜数日が経過した頃に発生します。
ここまでの内容をまとめると、ウルシかぶれの正体は「ウルシオールによって引き起こされる、アレルギー性の遅延性接触皮膚炎」ということになります。
漆器にウルシが使われるのはなぜ?
そんな「危険性」を持つウルシですが、私達の生活の中でも漆器という形で触れることがあります。
漆器といえば、木製の器物などに生漆(あるいはそれを精製したもの)を塗った伝統工芸品ですが…樹液を使うだけであれば他の樹木でも良いような気がします。そんな中、なぜわざわざウルシが採用されているのでしょうか?
その理由は、ウルシが塗料として非常に優れているからだとされています。先程取り上げたウルシオールが酸化・乾燥することよって耐久性・耐水性・防腐性・耐熱性、さらには抗菌・殺菌作用や防虫作用まで併せ持つようになります。これだけの効果は現在の化学技術では再現できないと言われており、今でも漆器が重宝される理由の一つになっています。
とはいえ肌に触れるとかぶれる点は変わりませんので、漆塗り見習いの方の多くがウルシかぶれに悩まされています。しかしながら、回数を重ねるうちに抗体が生成されるため、熟練の職人さんともなるとかぶれる頻度はめっきり少なくなるようです(※もちろん個人差はあります)。肌がかぶれるリスクを背負いながらも、品質の高い漆器を作り続ける職人の皆さまには頭が上がらないですね。
なお、塗料が乾いていないうちは炎症反応を引き起こしますが、乾いてしまえばその心配もありません。したがって、普段ウルシに触れることがない私達が既成の漆器に触れたとしても、肌がかぶれることはほとんどありません。