立春は過ぎたものの、まだまだ肌寒い日が続いています。そんな日によく食べるのが鍋料理なのですが、我が家では具材としてよくエノキタケを使います。エノキタケ特有のコリコリとした食感がたまらなく好きなんですよね。
さて、エノキタケといえば「白くて細長い」というのが一般的なイメージだと思うのですが、実は全てのエノキタケがこのような見た目をしている訳ではありません。例えば野生のエノキタケは全く異なる見た目をしているのですが、皆さまご存知でしたでしょうか。
エノキタケの概要
科・属名:タマバリタケ科エノキタケ属
種別:菌類
花色:─
花期:─
収穫期:冬(野生の場合)
分布:世界中(温帯〜亜寒帯)
別名:エノキ、エノキダケ、ナメタケなど
花言葉:─
◎特徴:
タマバリタケ科に属するキノコで、日本では本州〜九州にかけて広く分布しています。エノキをはじめとした広葉樹の枯れ木や切り株に自生することからその名が付けられました。1931年(昭和3年)頃には人工栽培の手法が確立され、現在では流通している商品の大半が人工栽培によって育てられたものです。キノコの中では珍しく、(野生のものは)主に冬に出現します。
天然のエノキタケは茶色だった!?
初見では全く信じてもらえなさそうですが、こちらが天然のエノキタケです。私達が連想する一般的なエノキタケとは異なり、かさが茶色かつ大きいことがわかります。柄の部分は太くて短く、付け根部分には細かな毛が生えている点が特徴です。
天然エノキタケにはぬめりがあるため、(市販の)エノキタケというよりはナメコに近い性質を待ちます。香りやうま味成分も多く、市販のエノキタケに比べて天然物の方が美味しいとも言われています。
市販のエノキタケが白いのはなぜ?
それでは、そんな天然物に比べて市販のエノキタケが白いのはなぜでしょうか?私であれば「もやしやホワイトアスパラガスのように、光をほとんど当てずに育てたからでは?」と答えてしまいそうですが、実際はそうでもないようです。
エノキタケの人工栽培手法が確立された当初は、上記のように光を当てずに育てていたようですが…天然のエノキタケ(野生種)を暗い場所で育てても、真っ白にはならないのだそうです。そこで菌の改良が進められた結果、現在のように光を当てても白く育つ菌(栽培種)が開発されました。したがって、市販のエノキタケが白いのは「白いキノコが育つように品種改良が行われたため」だと言えそうです。
また、市販のエノキタケは菌床栽培(おが屑や米ぬかを詰めた瓶を使って栽培する方法)によって生産されます。この際、成長途中のエノキタケを紙やプラスチックのシートでぐるりと筒状に巻くことによって「柄が細長くてかさの小さいキノコ」が出来上がります。というのも、エノキタケ自身の呼吸によって筒内の二酸化炭素濃度が上昇することで、酸素を求めて上へ上へと成長するからなのだそうです。また二酸化炭素がかさの成長を阻害するため、天然物とは異なりかさが小さくなると言われています。
【余談】ブラウンエノキの正体は?
最近、柄が細長くてかさが小さいにも関わらず、色だけが茶色の「ブラウンエノキ」と呼ばれるキノコを見かけることがあります。実は、先程取り上げた野生種と栽培種を交配させたエノキタケのことをこのように呼ぶのだそうです。性質の異なる菌同士を交配させているため、ブラウンエノキは両者の性質を程良く併せ持っている点が特徴です。