最近撮影した写真を整理していたところ、真夏に見かけたムラサキシキブ(コムラサキシキブ)の写真が出てきました。実は鮮やかな紫色で、まるで小さなブドウのようにも見えます。
そんなムラサキシキブですが、名前だけを聞くと平安時代の作家・歌人として知られる「紫式部」を連想される方が多いのではないでしょうか。ここまで人名に直結する名前の植物自体が珍しいと思うのですが、そもそもなぜこのような名前が付けられたのでしょうか?
ムラサキシキブの概要
科・属名:シソ科ムラサキシキブ属
種別:落葉低木
花色:淡紫
花期:6〜7月
原産:日本、中国、朝鮮半島など
別名:ミムラサキ(実紫)、ムラサキシキミ(紫重実)など
花言葉:聡明、上品、愛され上手など
◎特徴:
日本、中国、朝鮮半島などを原産とする落葉低木で、日本では北海道の一部を除く全国の山林に分布しています。夏の終わり頃〜秋にかけて鮮やかな紫色の実をつけるため、観賞用の樹木としても重宝されています(※野生種であるムラサキシキブは実がまばらなため、園芸品種としてコムラサキシキブが開発されました。コムラサキシキブは密集した実をつけるため、園芸分野ではこちらが多く植えられています)。園芸品種の中には白い実をつける品種もあり、こちらはシロシキブと呼ばれています。
▲シロキシブの実(参考)
名前の由来は?
「ムラサキシキブ」という名前は、冒頭で連想した通り作家・歌人である紫式部に関連しています。紫色の美しい実をつけることから、同じく「紫」がつく紫式部になぞらえたという説が有力です。
ただ上記はあくまでも一説であり、この他には「紫色の密集した実をつける」という意味合いのムラサキシキミ(紫重実)を由来とする説もあります。実際に江戸時代以前はムラサキシキミと呼ばれることもあったようで、現在ではこれが転じてムラサキシキブになったとも言われています。
【余談】人名のつく植物一覧
最後に、ムラサキシキブと同様に人名のつく植物をいくつか挙げてみました。こうして並べてみると植物学者に由来しているものが大半で、作家・歌人が由来のムラサキシキブが稀な存在であることがわかります。
◎コーレア(みかん科コーレア属)
・別名クリスマスベル。ポルトガルの植物学者であるJ・コレア・ダ・セラ氏に由来。
◎ゴテチャ(アカバナ科ゴテチャ属)
・スイスの植物学者であるシャルル・ゴデ氏が由来。
◎スプレケリア(ヒガンバナ科スプレケリア属)
・別名ツバメスイセン。ドイツの植物学者であるスペレケルゼン氏が由来。
◎フラサバソウ(オオバコがクワガタソウ属)
・別名ツタバイヌノフグリ。フランスの植物学者であるフランシェ氏とサヴァチェ氏が由来。
◎マルバイバリエガータ(ベンケイソウ属マンネングサ属)
・別名マルバマンネングサ。学名(Sedum makinoi)も含め、日本の植物学者である牧野富太郎氏が由来。
▲ゴテチャ(参考)
▲スプレケリア(参考)