今回はこちらの八ツ橋…の原料に使われている植物に関する話題です。今でもお土産として八ツ橋をいただく機会はあるのですが、私にとっては修学旅行のイメージが定着しているお菓子です(※小学校の修学旅行先が奈良・京都だったため、お土産として当時たくさん購入した記憶があります)。
近年は八ツ橋の味が多様化してきている印象ですが、伝統的な味と言えば「ニッキ」ではないでしょうか。独特の風味を持つニッキですが、その香りは何となく「シナモン」にも似ているような気がします。よく似た両者ですが、その原料には同じ植物を使っているのでしょうか?
ニッキの特徴
ニッキとは、日本産のニッケイ(肉桂)の根から作られるスパイスのことを指します。ニッケイが日本へ渡来したのは奈良時代で、本格的な栽培が始まったのは江戸時代以降です(※その後、南西諸島でも野生種が見たかったため、現在では日本も原産地の1つとされています)。収穫周期がとても長く(15年に1回程度)、根を掘り上げるのにも労力を要することから生産量自体は少なめです。そのため、シナモンに比べて高値で扱われています。
食用としてのニッキは甘い香りと強い辛味を併せ持っており、八ツ橋のほかニッキ飴やニッキ水などの原料としても使われています。八ツ橋の場合はそれほど辛味を感じませんが、これは砂糖の甘味によって辛味がかき消されているからなのだそうです。
シナモンの特徴
シナモンとは、スリランカ原産のニッケイ(セイロンニッケイ)の樹皮から作られるスパイスのことを指します。紀元前4000年頃からミイラの防腐剤として使われ始めたのかルーツで、「世界最古のスパイス」と呼ばれることもあります。樹皮を原料とするため収穫周期は比較的短く(2年に1回程度)、生産量は少なめです。そのため、ニッキに比べて安値で扱われています。
食用としてのシナモンは甘い香りとマイルドな風味が特徴で、ニッキとは異なり辛味を持っていません。またセイロンニッケイにはオイゲノールと呼ばれる特有の香り成分が含まれており(※)、殺菌効果や鎮痛効果があります。シナモンの用途は幅広く、シナモンロールやアップルパイをはじめた洋菓子のほか、カレーやチャイにも使われています。
なお、東アジア〜東南アジア原産のシナニッケイ(カシア) の樹皮から作られたスパイスも「シナモン」として流通しています。シナニッケイは甘い香りと辛味を併せ持っており、安値で流通しているシナモンの多くはこちらを原料としているようです。
ニッケイの概要
最後に、ニッキの原料として登場したニッケイの概要について簡単に触れておきたいと思います。
科・属名:クスノキ科ニッケイ属
種別:常緑高木
花色:黄緑
花期:5〜6月
原産:日本、中国、台湾
別名:ニッキ、ニッケなど
花言葉:純潔など
◎特徴:
中国・台湾などを原産とする常緑高木で、日本の南西諸島でも野生種が確認されています。樹皮が厚く香りを持つことから漢名で「肉桂」と表記し、これが転じて「ニッケイ」と呼ばれるようになりました。
前述のセイロンニッケイやシナニッケイとは異なり、樹皮はあまり活用されていません。そのためニッキの原料としては樹皮ではなく、香り成分を多く持つ根の部分が活用されています。