◎関連記事はこちら
河津桜が早く開花するのはなぜ?〜日本で一番開花が早い桜・遅い桜とは?〜 - アタマの中は花畑
先日投稿した記事の中で、河津桜がカンヒザクラとオオシマザクラの交雑によって誕生したことについて触れました。「交雑」は植物の新品種が誕生するきっかけにもなる工程ですが、よく似た言葉に「交配」もあります。どちらもしばしば耳にしますが、交配と交雑では一体何が異なるのでしょうか?
交配と交雑の違いは?
植物の場合、交配・交雑ともに「種を作り子孫を残す」という点では一致します。それではなぜ、交配・交雑の2つが使われているのでしょうか?それには、種を作るための親の組み合わせが深く関係しています。
・交配:同じ品種を掛け合わせて種を作ること
・交雑:違う品種を掛け合わせて種を作ること
冒頭に掲載した関連記事でいえば、
・カンヒザクラ×カンヒザクラ=カンヒザクラは「交配」、
・カンヒザクラ×オオシマザクラ=河津桜は「交雑」
ということになります。
なお交雑の中でも、人の手を一切介さずに行われるものを自然交雑と呼ぶこともあります。前日取り上げた河津桜については、自然交雑によって誕生した品種と言われています。同じ桜で言えば、有名なソメイヨシノも交雑(エドヒガンとオオシマザクラの雑種の交雑)によって誕生した品種です。
交雑は良いことばかりではない?
交雑では異なる品種同士を掛け合わせることから、誕生した子孫は両方の親の性質を引き継ぎます。例えば河津桜の場合は、カンヒザクラの赤い花色と、オオシマザクラの大輪の両方の性質を持ちます。
こうして聞くと、交雑にはメリットばかりあるような気がしてしまいますが…必ずしもそうではありません。河津桜の場合は、中国南部や台湾を原産とするカンヒザクラの性質を持つため、一般的な桜に比べて開花時期が非常に早い点が特徴です。しかしながら、開花時期があまりにも早い(1〜3月頃)ために日本の気候には合わず、開花期に虫などによる受粉の恩恵をあまり受けることができません。そのため、一般的なサクラに比べて種子ができにくく(※)、日本では挿し木や接木などによって株を増やす必要があるようです。
※ソメイヨシノについては全て同じ木のクローンであるため、原理上種子を作ることができません。
◎関連記事はこちら
【ソメイヨシノ】日本の桜と言えばやっぱりこれ!〜日本中のソメイヨシノは全てクローンだった!?〜 - アタマの中は花畑
今回は桜を例に挙げましたが、品種によっては交雑によって生殖能力を失ったり、親株にはなかった毒性を持ったりすることもあるようです。また、交雑により「雑種」が繁栄することで、本来の品種が数を減らしてしまうケースもあります。交雑によって新種が誕生する点はロマンがありますが、相応のリスクを持つ点も気にかけておいた方が良さそうです。