今回は、理科の実験でたびたび登場する「リトマス試験紙」に関する話題です。リトマス試験紙とは水溶液の酸性/アルカリ性を判定するために使用されるもので、大きく「赤リトマス紙」と「青リトマス紙」の2種類があります。
紙の色こそ違いますが、どちらのリトマス試験紙も元々はリトマスゴケと呼ばれる植物を原料にしていました。理科の授業で使っていた当時は気にかけたこともなかったのですが…なぜ同じ植物を原料としているのに、赤と青で色や性質が異なるのでしょうか？
リトマスゴケの概要
冒頭でも触れたとおり、リトマス試験紙は元々リトマスゴケと呼ばれる植物を原料としていました。まずは、リトマスゴケの概要について簡単にご紹介したいと思います。
(※引用可能な画像が見つからなかったため、今回はリトマスゴケの画像なしです)
----------------------
科・属名：リトマスゴケ科リトマスゴケ属
種別：地衣類
花色：─
花期：─
原産：地中海沿岸〜西アフリカ沿岸
別名：─
花言葉：─
◎特徴：
地中海沿岸〜西アフリカ沿岸を原産とする地衣類で、海岸沿いの岩石や樹木に着生しています。リトマスゴケから抽出した紫色の色素は「リトマス」と呼ばれ、リトマス試験紙の原料として活用されています。その性質から旧ノルド語ではlitmosi(lit(染料)＋mosi(苔))と呼ばれ、これがリトマスの語源になったと言われています(※諸説あり)。
なお日本にはリトマスゴケが分布していないため、戦時中などは(日本にも分布する)ウメノキゴケから抽出した色素をリトマスの代わりに用いていたようです。但しこれは一時的な代用であり、その後の実用化には至っていません。
▲ウメノキゴケ(参考)
リトマス試験紙について
リトマス試験紙とは、概要欄でも触れたリトマスを濾紙(ろし)に染み込ませて乾燥させたものを指します(※)。水溶液が酸性/アルカリ性のどちらであるかを簡易的に把握することが目的で、前者の場合は青リトマス紙、後者の場合は赤リトマス紙がそれぞれ用いられます。但し、リトマス試験紙では水溶液のpHまでは分からないため、詳細な判定には「pH試験紙」が代わりに用いられます。
※近年ではリトマスゴケから抽出したリトマスではなく、人工色素で代用するケースがほとんどです。原料が人工色素であっても、赤リトマス紙・青リトマス紙の性質は変わりません。
◎赤リトマス紙の特徴
・水溶液がアルカリ性の場合、赤→青に変色する
(pH8.3以上で色素の構造が変わり、青く発色)
・水溶液が酸性〜中性の場合は変色しない
◎青リトマス紙の特徴
・水溶液が酸性の場合、青→赤に変色する
(pH4.5以下で色素の構造が変わり、赤く発色)
・水溶液が中性〜アルカリ性の場合は変色しない
▲pH試験紙(参考)
赤リトマス紙と青リトマスの違いとは？
ここまでの内容から「リトマス紙の原料にリトマスと呼ばれる色素が用いられていること」「赤リトマス紙と青リトマス紙の性質が異なること」がそれぞれわかりました。ということで今回の本題に入りますが…同じ色素を原料としているにも関わらず、赤リトマス紙と青リトマス紙でそれぞれ性質が異なるのは一体なぜなのでしょうか？
これにはリトマス試験紙の製造工程が深く関係しています。濾紙にリトマス(または人工色素)を染み込ませる際、溶液に少量の塩酸を混ぜて赤く染め上げたものが赤リトマス紙、少量のアンモニアを混ぜて青く染め上げたものが青リトマス紙になります。そしてこの両者を使い分けることで、水溶液が酸性/中性/アルカリ性のいずれであるかを大まかに判定することができます。どちらか片方のみでは中性の判断ができないため、やはりリトマス試験紙は2種類必要ということになります。
・青リトマス紙が赤く変色→水溶液は酸性
・赤リトマス紙が青く変色→水溶液はアルカリ性
・両方とも変色しない→水溶液は中性
…と、ここまでまとめたところで新たに1つ疑問が生まれてしまいました。溶液に何も混ぜずに「紫リトマス紙」を作ってしまえば、この1種類だけで酸性/中性/アルカリ性が見分けられてしまう気がするんですよね。
結局調べてみてもそれらしい理由は見つからなかったのですが、おそらく「基準色が紫だと色の変化が分かりにくい」からではないか？と勝手に想像しています。
