半月ほど前のことになるのですが、とある遊歩道沿いで山桑(ヤマグワ)と思われる木を見つけました。私有地内に生えていた木だったので写真を撮るだけにしたのですが、真っ黒に熟した実は甘くて美味しいんですよね。
そんな山桑のほかに、日本でよく知られる桑としては真桑(マグワ)が挙げられます。名前だけ聞くと真桑の方が大型で、見分けも簡単そうに感じてしまいますが…実は見分けがかなり難しいと言われることもあります。それでは、両者にはどのような違いがあり、何が見分けを難しくしているのでしょうか?
山桑(ヤマグワ)の概要
科・属名:クワ科クワ属
種別:落葉小高木
花色:薄緑
花期:4〜5月
収穫期:5〜7月
原産:東アジア〜ヒマラヤ
別名:クワ、シマグワなど
花言葉:彼女のことが好き、ともに死のうなど
◎特徴:
東アジア〜ヒマラヤを原産とする落葉小高木で、日本では北海道〜九州にかけて広く分布しています。養蚕産業が盛んだった日本では古くから重宝されており、「山野に自生する蚕が食う葉」であることから現在の名称が付けられました。
また小型で多肉質・多汁質な果実を付けることからベリー(Berry)の一種とも知られ、桑に関しては「マルベリー」と呼ばれることもあります。
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山桑と真桑(マグワ)の違いについて
概要欄で取り上げたのは野生種の山桑ですが、これとは別に養蚕向けに持ち込まれた真桑(マグワ)が存在します。ここでは、両者の違いについても簡単にまとめてみました。果実自体は真桑の方が大粒で美味しそうに見えますが、実は山桑の方が糖度が高いのだそうです。
◎山桑の特徴(写真左)
・東アジア〜シベリア原産で、日本にも元々自生している
・真桑に比べて果実は小粒で、丸みを帯びている
・果実の先端に雌しべの柱頭が残りやすい
・雌雄別株であることが多い
・葉の切れ込みが深く、手のような形をしていることが多い
・葉の表面に毛が多く生えており、光沢はあまりない など
◎真桑の特徴(写真右)
・中国原産で、養蚕用の品種改良を目的として日本へ持ち込まれた
・山桑に比べて果実は大粒で、細長い形状をしている
・果実の先端に雌しべの柱頭が残りにくい
・雌雄同株であることが多い
・葉の切れ込みは浅く、丸みを帯びていることが多い
・葉の表面にはあまり毛が生えておらず、光沢がある など
山桑と真桑の見分けが難しいのはなぜ?
先程触れたとおり、山桑と真桑の違いはそれなりにたくさん挙げることができます。この違いだけを見れば比較的容易に見分けられそうですが…実際には両者の交雑種が多く存在するため、両者の明確な線引きは難しいのだそうです。真桑に関しては元々中国から持ち込まれた品種ですが、その後山桑との交雑(人為交雑、自然交雑)が進んだことで「雑種」が増えたしまったのだと考えられます。
ここで、冒頭で取り上げた「私が山桑だと思い込んで撮影した木」を再度見てみることにしましょう。写真から判別する限りでは山桑・真桑の両方の特徴を持っており、この樹木も雑種だったのかもしれません。
【果実】やや小粒だが(=山桑?)、細長い形状をしている(=真桑?)。先端には雌しべの柱頭らしき部分が多く残っている(=山桑?)。
【葉】切れ込みは浅く、丸みを帯びている(=真桑?)。表面の毛や光沢は判別できず。