地域にもよるかと思いますが、我が家の近所にある小学校では今週から夏休みに入ったようです。私が小学生だった頃を思い返してみると…学校のプールが開放されている日は極力通い、その他の日は友達と遊んだり、昆虫採集をしたりしていたような気がします。今回は、その中の「昆虫採集」に着目してみたいと思います。
幼少期の私にとって、昆虫採集の目玉と言えばやはりカブトムシやクワガタムシでした。そのため樹液の出ていそうなドングリの木の周辺ばかりを探していたものですが…実際のところ、カブトムシやクワガタムシは本当にドングリの樹液ばかりを飲んでいるのでしょうか?
ドングリの定義
本題に入る前に、まずは冒頭で触れたドングリの定義についてご紹介したいと思います(※以前の記事からの引用です)。
ドングリとはブナ科の果実の総称(※)で、世界中で132種類、日本ではうち22種類が分布しています。「ドングリ=種子」というイメージを持ちがちですが、実は種子ではなく果実です。落ちているドングリを例に挙げると、茶色の部分が果皮、中に入っている黄色の部分が種子に該当します(果肉はほとんど発達しない)。また、ドングリの下半分あるいは全体を覆う帽子のような部分は殻斗(かくと)と呼ばれます。
※ブナ科に属する植物のうち、栗、ブナ、イヌブナなどは「ドングリ」と区別されることもあります。
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カブトムシ・クワガタムシはドングリの樹液が好きなのか?
カブトムシやクワガタムシが集まりやすい木について調べてみたところ、最も多く掲載されていたのがクヌギやコナラでした。特にクヌギは樹液が出やすいようで、昆虫が集まる木の代表格として挙げられていました。他にもアベマキ、シラカシ、ブナ、栗(いずれもブナ科に属する)などの記載があったことから、どうやら「カブトムシ・クワガタムシはドングリの樹液が好き」というのはあながち間違っていないようです。
▲クヌギ(参考)
その一方で、これらの昆虫はドングリ以外の木にも集まることがあります。代表的な樹木としてはヤナギ(ヤナギ科)が挙げられ、ミヤマクワガタ、アカアシクワガタ、ヒメオオクワガタなどが採集できるようです。特にクヌギは東北地方を自然分布の北限としているため、寒い地域や標高の高い地域でも生育可能なヤナギはカブトムシ・クワガタムシにとっても貴重な存在だと言えます。
▲ヤナギ(参考)
【余談】樹液が甘いのはなぜ?
先程取り上げたドングリ(クヌギやコナラなど)やヤナギからは甘い樹液が出ますが、カブトムシやクワガタムシが集まったところで種子を運んでくれる訳ではありません。子孫を増やすだけであれば昆虫達を呼び寄せる必要もないと思うのですが、なぜ甘い樹液を出しているのでしょうか?
樹液の主な成分は光合成などによって生成された糖で、カミキリムシなどによって幹が傷つけられることで外に染み出してきます。木の立場からしたら意図せず糖が染み出してしまったものが樹液であり、虫を呼び寄せる目的で意図的に出しているのものではないようです。
また樹液には糖が含まれるため、もちろん甘味も感じるのですが…人間にとっては決して美味しいものではありません。実際には抗菌物質(タンニン)による渋味や、発酵による酸味なども含まれているため、そのまま口に含むと「微妙な味」だと感じてしまうことが多いようです(※)。
※サトウカエデ(メープルシロップの原料としてもお馴染み)など、樹液の中にはそのままでも美味しく感じるものもあります。