アタマの中は花畑

小さな花壇と家庭菜園を手に入れたガーデニング初心者の日々

【屋久島】屋久杉の寿命が長いのはなぜ?

先日、大学サークル時代の友人達と久し振りに食事に出掛けました。卒業から10年以上が経過し、周りの環境もそれぞれ変わってきていますが、こうして今でも集まる機会に恵まれているのはとても有り難いことです。お互いの近況も話しつつ、大学時代の話題でも大いに盛り上がりました。

 

当時はアウトドア系のサークルに所属していたこともあり、長期連休があれば必ずと言って良いほど遠くへ出掛けているような日々でした。そんな中でも、特に思い出に残っている遠出の1つに屋久島縦走があります。3泊4日の縦走の末、「縄文杉」とも呼ばれる屋久杉の元に辿り着いた際にはこの上ない達成感を味わうことができました。

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(※写真はイメージです)

 

…と、前置きがまとめきれずに長くなってしまいましたが、ここからが本題です。一般的な杉の寿命は500年程度と言われていますが、屋久島には縄文杉をはじめ、樹齢1000年を超える屋久杉が多数分布しています。同じ「杉」であるにも関わらず、なぜ屋久杉はこんなに寿命が長いのでしょうか?

 

 

ヤクスギ(屋久杉)の概要

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科・属名:ヒノキ科スギ属

種別:常緑高木

花色:─

花期:2月中旬〜4月上旬頃

原産:日本

別名:(後述)

花言葉:雄大、堅実、堅固など

◎特徴:

杉の地域名称の1つで、一般的には鹿児島県屋久島の標高500mを超える山地に自生する、樹齢1000年以上の杉のことを指します(※)。昔は建築材や船材として重宝されてきましたが、1970年代から屋久杉の保護活動が始まり、2001年以降は一切の伐採が禁じられています。

屋久杉の中で最も樹齢が高いとされるのが縄文杉で、その樹齢は2000〜7200年程度と推定されていました。その後科学的な計測が行われ、縄文杉の樹齢は少なくとも2170年を超えることまでは判明しています。

※標高500mを超える山地に自生していたとしても、樹齢が1000年に満たない場合は小杉(こすぎ)と呼ばれます。

 

屋久杉の生長が遅いのはなぜ?

屋久杉の生長速度は、屋久島特有の生育環境が大きく関係しています。屋久島は、元々海底深くのマグマが冷え固まってできた花崗岩が隆起したことで形成された島です。花崗岩質の土壌には栄養分がほとんど含まれていないため、その分植物の生長も緩やかになります。

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加えて屋久島は「ひと月に35日雨が降る」と言われるほど、降水量の多い島としても知られています。特に屋久杉が自生する山間部の年間降水量は8,000〜10,000mmにも達すると言われ、東京の年間降水量(1,500mm程度)の5倍以上にも及びます。降水量の多さだけを聞くと、植物にとっては良い環境のようにも思えてしまいますが…屋久島の場合は必ずしもそうではありません。屋久島の土壌は花崗岩が風化することで形成されますが、毎日のように降り注ぐ雨がせっかくできた土壌を洗い流してしまいます。そのため屋久島の土壌は非常に浅く、屋久杉が十分に根を伸ばすこともできません。根を伸ばせなければ吸水にも制約が生じるため、たくさん降った雨を有効活用することもできず、生長速度は緩やかになります。

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したがって屋久杉の生長の遅さについては、屋久島特有の生育環境に大きく影響されていることがわかりました。

・土壌に栄養分が含まれておらず、痩せている点

・土壌が浅く、十分に根を伸ばせない点

 

屋久杉の寿命が長いのはなぜ?

一般的な杉に比べて屋久杉の寿命が長い点についても、屋久島特有の生育環境が関係しています。前述の通り屋久杉の成長速度は非常に遅いですが、この遅さによって年輪の間隔が狭まり、緻密で丈夫な木質となります。さらに、緩やかに生長することで細胞壁が厚くなり、細胞内に樹脂を溜め込みやすくなります。こうして形成された丈夫で樹脂の多い木質は外傷・腐敗・虫害などに強く、結果として長寿を支えていると考えられます。

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実際のところ、屋久杉の中には幹の中央が空洞になった個体も多く存在します。それでも腐敗せずに生きているのは、屋久島特有の環境により形成された木質のおかげとも言えそうです。

 

【余談】屋久杉の苗を違う場所で育てたらどうなる?

ここまでの内容から、屋久杉の生長速度や寿命については、屋久島特有の環境が大きく関係していることが分かりました。ではそんな屋久杉の苗を全く異なる環境下で育てた場合、先程挙げたような性質(生長速度の遅さ、寿命の長さ)は表れるのでしょうか?

 

結論から書いてしまうと、仮に屋久杉と全く同じ遺伝子を持っていたとしても、異なる環境下で育てた場合は(屋久杉とは)性質も異なる可能性が高いと言われています。例えば一般的な杉林に屋久杉の苗を植えたとしても、土壌に恵まれるため生長速度は早く、かつ雨量が少ないため木材に含まれる油分の割合も低くなります。

なお、屋久杉の種から育てた苗木や接ぎ木を植林したものを屋久島地杉(やくしまじすぎ)と呼びますが、こちらは管理された環境下で育てるため、一般的な杉と同じく30〜60年程度で(木材として)伐採することができます。