11月に入り、通勤時にいつも通る公園のツタが赤く色付き始めました。紅葉といえばモミジ(カエデ)やイチョウを思い浮かべる方が多いかと思いますが、ツタの紅葉もなかなか見応えがあります。春〜夏にかけてはあまり目立たなかったツタですが、葉が色付くと一気に存在感が増しますね。

そんなツタですが、木に絡みついている様子は「ツル(蔓)」そのものです。ツタとツルはよく混同されますが、実際のところ両者は違うものとして扱われているのでしょうか?
ツタの概要

科・属名:ブドウ科ツタ属
種別:つる性落葉木本
花色:黄緑
花期:6〜7月
原産:日本、朝鮮半島、中国など(※品種により異なる)
別名:ナツヅタ、モミジヅタ、ジャパニーズアイビーなど
花言葉:結婚、永遠の愛、誠実、勤勉など
◎特徴:
日本、朝鮮半島、中国を原産とするつる性落葉木本で、日本では北海道〜九州の山野に分布しています。ブドウ科ツタ属に属する植物は全部で15種類ほど存在し、これらを総称して「ツタ」と呼ぶこともあります。日本に分布しているのはナツヅタと呼ばれる品種で、秋になるとモミジのように紅葉することからモミジヅタとも呼ばれます。
なお、観葉植物として知られるアイビーやヘデラはウコギ科キヅタ属に属しており、ツタとは異なる植物です。つる性木本であることは共通していますが、アイビーやヘデラは常緑樹のため、冬でも青々とした葉を茂らせています。
どうやって絡み付いているの?
ツタは他の木や壁などに絡み付いて生長する性質があり、その様子は名前の由来にもなったほどです(つたって→ツタに転訛)。加えて生命力も非常に高く、リニューアル前の阪神甲子園球場ではツタが外壁の大半を覆ってしまうほど繁茂していました(※)。ツタ自身の力だけでは上に伸びることはできませんが、他の木や壁に絡み付くことで樹高5〜10mほどまで達すると言われています。
※リニューアル後に再植栽されましたが、まだ外壁全体を覆うには至っていません。

ここで1つ疑問なのですが…ただ木や壁に絡み付くだけでは重力に逆らえず、下に落ちてしまうような気もします。そんな中、ツタはどうやって上へ上へと生長していくのでしょうか?
ポイントとなるのはツタの巻きひげで、先端を円盤状の吸盤にすることで木や壁に張り付いているのだそうです。ただ、空気の圧力で貼り付く吸盤とは少し異なり、ツタから分泌される粘着物質によって貼り付く性質を持ちます。さらに粘着物質が乾くことで接着剤のような役割を果たし、全体が乾燥しても固定力は維持されます。さらに、気孔から生えた根毛が木や壁の凹凸に入り込み、物理的な支えとなることで全体をしっかりと固定します。

私の実家でも以前ツタが繁茂していたのですが、撤去する際にとても苦労した記憶があります。ただ前述した吸盤、粘着物質、根毛のことを考えると、当時苦労したのも何だか納得できるような気がします。
ツタとツルの違いは?
ここでようやくタイトルの件に触れますが、今回紹介したツタとツルは「違うもの」として扱われているのでしょうか?そこで本記事では、両者の定義について簡単に整理してみました。ツタは特定の植物を指す名称、ツルは植物の一器官を指す名称であり、両者の定義は全く異なることが分かります。

◎ツタの定義
・ブドウ科ツタ属に属する植物のことで、日本ではナツヅタを指すことが多い。
・巻きひげの先端を吸盤状に変化させ、粘着物質や根毛も組み合わせながら本体を固定する。
◎ツルの定義
・植物の器官の総称で、一般的には茎が長く伸びたものを指す。
・他の物に自ら巻き付いたり、巻きひげを絡ませたりすることで本体を固定する。
・特定の植物を指すものではなく、ツタが伸ばしている茎に関しても「ツタ」と呼ぶ。